短い答え: ペルソナシリーズで神話の色がいちばん濃いのは『ペルソナ3』です。主人公のオルフェウスとタナトス、物語の根幹にいるニュクスをはじめ、仲間のペルソナの多くがギリシャ神話から取られ、覚醒後にはイシスのようなエジプトの女神も現れます。『ペルソナ5』では、北欧のトリックスターロキや、火を盗んだティタンプロメテウスがペルソナになっています。
ペルソナという言葉は、心理学者ユングが「人が社会に向けてかぶる仮面」を指して使った用語です。呼び出される存在のほうは、世界の神話や伝説、文学から集められています。ここでは『ペルソナ3』を中心に、ギリシャ・北欧・エジプト神話から来たペルソナを、原典で何をした存在なのかで並べます。
ペルソナ3のペルソナ元ネタ一覧
| キャラクター |
ペルソナ |
神話では |
| 主人公 |
オルフェウス |
竪琴の名手の詩人。死んだ妻エウリュディケーを連れ戻しに冥界へ下り、最後の一歩で振り返って失う |
| 主人公 |
タナトス |
死そのものの神。夜の女神ニュクスの子で、眠りの神の双子 |
| 岳羽ゆかり |
イオ → イシス |
ゼウスに愛され、白い牝牛に変えられてエジプトまでさまよった乙女。ギリシャ人は彼女をエジプトの女神イシスと重ねた |
| 伊織順平 |
ヘルメス → トリスメギストス |
神々の伝令。トリスメギストス(三倍偉大な者)は、ヘルメスとエジプトの知恵の神トトが重なった呼び名 |
| 真田明彦 |
ポリデュークス → カエサル |
ゼウスの子で不死の拳闘士ポリュデウケス。カエサルはローマの歴史上の人物 |
| 荒垣真次郎 |
カストール |
ポリュデウケスの双子で、死すべき人間のカストル |
| 桐条美鶴 |
ペンテシレア → アルテミシア |
ペンテシレイアはトロイア戦争でアキレウスに討たれたアマゾネスの女王。アルテミシアは古代カリアの女王の名 |
| アイギス |
パラディオン → アテナ |
パラディオンはトロイアを守っていたアテナの神像。アテナは知恵と戦略の女神で、アイギスの名も彼女の防具アイギスから |
| 天田乾 |
ネメシス → カーラ・ネミ |
ネメシスは思い上がりに罰を下す応報の女神。カーラ・ネミはインド神話の名 |
| コロマル |
ケルベロス |
冥界の門を守る三つ頭の番犬 |
| 山岸風花 |
ルキア → ユノ |
ユノはローマ神話の女神で、ギリシャのヘラにあたる |
| タカヤ(ストレガ) |
ヒュプノス |
眠りの神。タナトスの双子 |
| ジン(ストレガ) |
モロス |
避けられない破滅の運命を擬人化した神 |
| チドリ(ストレガ) |
メーディア |
コルキスの王女で魔女のメデイア |
| メティス(エピソード アイギス) |
プシュケイ |
愛の神に愛された人間の娘プシュケー |
ギリシャ、北欧、エジプト神話から来たペルソナを数えると、この表に17体、下の『ペルソナ5』に4体で、合わせて21体です。
主人公と、ニュクスの子どもたち
『ペルソナ3』の配役は、ヘシオドスの『神統記』の家系図とよく重なります。『神統記』によれば、夜の女神ニュクスはひとりで多くの子を産みました。その中に、死のタナトス、眠りのヒュプノス、破滅の運命モロス、そして応報のネメシスがいます。つまり主人公のタナトス、タカヤのヒュプノス、ジンのモロス、天田のネメシスは、神話ではみなニュクスを母とする兄弟姉妹です。後日談『エピソード アイギス』に登場するエレボスも、同じ『神統記』でニュクスとともにカオスから生まれた原初の闇です。
ニュクスがどれほど恐れられていたかは、ホメロスも書いています。『イリアス』で眠りの神がゼウスの怒りから逃げたとき、母のもとに駆け込むと、ゼウスは「速き夜」の機嫌を損ねるのを恐れて手を引きました。神々の王でさえ遠慮するこの女神の名を、ペルソナ3は物語の根幹に据えているわけです。
主人公の最初のペルソナがオルフェウスなのも、象徴的です。オルフェウスは、死んだ者を取り戻そうと冥界まで下り、それでも死には勝てなかった詩人。ペルソナのオルフェウスが背負う竪琴は、神話のオルフェウスの竪琴で、この竪琴はのちに星座のこと座になったと伝わります。
神話を知ると見える組み合わせ
※ネタバレ注意: この節は、『ペルソナ3』の中盤以降の展開に触れます。
荒垣と真田は幼なじみで、ペルソナはディオスクロイの双子です。神話で死すべき運命にあるのは人間のカストルのほうで、残されたポリュデウケスは、自分の不死を分けてでも兄弟と一緒にいることを選びます。
ゆかりのイオがイシスに覚醒するのにも、原典の裏づけがあります。ヘロドトスは、エジプトのイシス像は雌牛の角を持つ女性の姿で、ギリシャ人がイオを描くのと同じだと書き、アポロドロスは、エジプトにたどり着いたイオがイシスと呼ばれたと伝えています。順平のヘルメスがトリスメギストスになるのも、ギリシャの神がエジプトでトトと重なった歴史をなぞっています。
アイギスのアテナにも続きがあります。後日談に登場するメティスは、アイギスを姉と慕う少女です。ところが神話のメティスは、アテナの母。ゼウスはメティスを呑み込み、やがてゼウスの頭からアテナが生まれました。詳しくはゼウスの最初の妻メティスの記事で。
ペルソナ5: 反逆者のあとに目覚める神々
『ペルソナ5』の怪盗団は、最初のペルソナの多くが物語や伝説の反逆者・義賊で、覚醒すると神話の神になります。そのうちギリシャと北欧の神は4体。1体はネタバレになるので、表のあとに分けて書きます。モルガナのメリクリウスは、ローマ神話でヘルメスにあたる神です。
| キャラクター |
ペルソナ |
神話では |
| 高巻杏 |
カルメン → ヘカーテ |
魔術と十字路の女神ヘカテー。娘を探すデメテルに、松明を手に寄り添った |
| 佐倉双葉 |
ネクロノミコン → プロメテウス |
神々から火を盗んで人間に与えたティタン。罰として岩に縛られ、鷲に肝臓を食われ続ける |
| 芳澤かすみ(ザ・ロイヤル) |
サンドリヨン → ヴァナディース |
「ヴァン神族の女神」を意味する、フレイヤの別名 |
※ネタバレ注意: 次の段落は、『ペルソナ5』後半の展開に触れます。
明智吾郎のペルソナは、ロビンフッドのほかにもう1体、北欧のトリックスター、ロキです。神話のロキは神々の仲間でありながら、最後はラグナロクで神々の敵に回ります。ロキがどう神々を裏切っていくのかは、ロキの子どもたちとラグナロクの解説で原典どおりに追えます。
聴いて学べる神話アプリMythologyNowでは、ペルソナ3の主人公が最初に呼び出す詩人の物語、オルペウスとエウリュディケーを1話5分の朗読で聴けます。第1章は、婚礼の日にエウリュディケーが蛇に噛まれる場面です。死神タナトスが鎖につながれるシシュポス 死を欺いた男、ゆかりのペルソナのもとになったイオとヘラの嫉妬も、第1章はこのサイトで最後まで再生できます。
よくある質問
ペルソナ3の元ネタは何神話ですか?
中心はギリシャ神話です。主人公のオルフェウスとタナトス、仲間のイオ、ヘルメス、ポリデュークス、カストール、ペンテシレア、パラディオン、ネメシス、ケルベロス、敵のヒュプノスとモロス、物語の根幹にいるニュクスまで、主要なペルソナの多くがギリシャ神話から来ています。覚醒後のイシスとトリスメギストスはエジプトにつながり、カエサルやユノはローマの名前です。
ペルソナ3のオルフェウスの元ネタは?
ギリシャ神話の詩人オルフェウス(オルペウス)です。竪琴の音で獣や木や岩まで動かし、毒蛇に噛まれて死んだ妻エウリュディケーを取り戻すために冥界へ下りました。地上に出るまで振り返ってはならないという約束を最後の一歩で破り、妻を永遠に失います。ペルソナが背負う竪琴も、この神話から来ています。
ペルソナ4の元ネタは何神話ですか?
日本神話です。主人公のイザナギをはじめ、陽介のジライヤ(のちにスサノオ)、雪子のコノハナサクヤ(のちにアマテラス)、完二のタケミカヅチなど、仲間のペルソナは日本の神や伝説の人物が中心です。タケミカヅチの神話は、ダンまちの神様元ネタ一覧でも紹介しています。
ペルソナ2にもギリシャ神話のペルソナはありますか?
あります。『ペルソナ2 罪』では、周防達哉の専用ペルソナがアポロ、天野舞耶がアルテミス、三科栄吉がハーデスと、主要メンバーにギリシャの神々が並びます。神話のアポロンとアルテミスは、女神レトから生まれた双子です。