短い答え: 『遊戯王』の三幻神は、古代エジプトから名前を取っています。オシリスは冥界の王になった神、ラーは太陽神、そしてオベリスクは神ではなく、太陽神にささげられた石の記念碑です。カードの姿は作品のオリジナルで、オシリスもラーも神話では竜ではありません。そのかわり、千年アイテムのウジャト眼、千年秤、ファラオの失われた名前といった設定には、エジプト神話がかなり正確に織り込まれています。
ここでは三幻神と、作品の古代エジプトの設定を、本物のエジプト神話と並べて7つ解説します。

短い答え: 『遊戯王』の三幻神は、古代エジプトから名前を取っています。オシリスは冥界の王になった神、ラーは太陽神、そしてオベリスクは神ではなく、太陽神にささげられた石の記念碑です。カードの姿は作品のオリジナルで、オシリスもラーも神話では竜ではありません。そのかわり、千年アイテムのウジャト眼、千年秤、ファラオの失われた名前といった設定には、エジプト神話がかなり正確に織り込まれています。
ここでは三幻神と、作品の古代エジプトの設定を、本物のエジプト神話と並べて7つ解説します。
※この記事の後半は、原作の最終章(アニメの「王の記憶編」)の内容にも触れます。
| 『遊戯王』 | エジプト神話の元ネタ | 神話では |
|---|---|---|
| オシリスの天空竜 | オシリス | 弟に殺され、復活して冥界の王になった神 |
| オベリスクの巨神兵 | オベリスク | 太陽神にささげられた、先のとがった石柱 |
| ラーの翼神竜 | ラー | 舟で空と冥界をめぐる太陽神 |
| 千年アイテムのウジャト眼 | ホルスの目 | 奪われ、癒やされて元に戻った目 |
| 千年秤 | 死者の審判 | 心臓とマアトの羽根を天秤で量る |
| カー | カー(生命力) | 人とともに生まれ、死後も生き続ける魂の一部 |
| ファラオの名前 | 名前の力 | 名前を消されると、死後の存在まで消える |
カードのオシリスの天空竜は、口が二つある赤い竜です。英語版では「スライファー」という別の名前になっています。
神話のオシリスは、竜とはまったく違う姿の神です。もとはエジプトを治める王でしたが、弟のセトに殺され、体を14に切り分けられてナイル川の流域にばらまかれました。妻のイシスがその断片を一つずつ集めてよみがえらせ、オシリスは生者の世界ではなく冥界の王になります。ミイラの姿で、王笏(牧杖)と殻竿を手にし、肌は再生を表す緑で描かれます。
「天空」の竜という設定も、神話のオシリスより、空の神であるハヤブサのホルスや天空の女神ヌトに近いものです。オシリスの物語はオシリス神話をわかりやすくで詳しく解説しています。
青い巨人の姿をしたオベリスクの巨神兵ですが、エジプト神話にオベリスクという神はいません。オベリスクは、一本の石から切り出した、先のとがった細長い記念碑です。太陽神ラーにささげられ、先端は太陽の光を受けて輝くように金属で覆われることもありました。神殿の入り口に二本一組で立てられ、カルナック神殿やルクソール神殿にいまも残っています。
ルクソール神殿の一本は19世紀にフランスへ贈られ、1836年からパリのコンコルド広場に立っています。高さ20メートルを超えるものもあり、そびえ立つ石柱の姿が「巨神兵」という名前によく合っています。
金色の翼を持つラーの翼神竜は、三幻神の頂点に立つカードです。神話のラーも、エジプトの神々の頂点に立つ太陽神でした。ハヤブサの頭に太陽円盤をいただく姿で描かれ、昼は舟に乗って空を渡り、夜は冥界をくぐり抜けて、毎朝また東から昇ります。夜の冥界では、大蛇アポピスが毎晩ラーの舟を呑み込もうと襲いかかり、太陽はそのたびに戦って勝たなければなりません。
ラーの翼神竜が不死鳥の姿になるのにも、神話の裏づけがあります。太陽神の都ヘリオポリスでは、ベンヌという聖なる鳥が太陽とともに崇められました。古代ギリシャのヘロドトスがヘリオポリスの聖鳥として書き残した「フェニックス」は、このベンヌだと考えられていて、不死鳥伝説のルーツの一つとされています。
千年パズルをはじめ、千年アイテムには必ず一つの目の文様が刻まれています。これがウジャト眼で、エジプトでいちばん有名なお守りの印です。
神話では、これはホルスの目です。父オシリスを殺したセトと王位をかけて争ったとき、ホルスは片目をえぐり取られました。その目は知恵の神トトによって癒やされ、元どおりになったと伝えられます(女神ハトホルが癒やしたとする版もあります)。そこからウジャト眼は「欠けたものが完全に戻る」しるしになり、身を守る力を持つお守りとして、生者も死者も身につけました。ホルスとセトの争いの全体はホルスとセトの争いで聴けます。
シャーディーの千年秤は、相手の心の重さを量るアイテムです。この元ネタは、エジプト人が死後に必ず通ると信じていた「死者の審判」でしょう。
『死者の書』によれば、死んだ人の心臓は天秤にかけられ、もう一方の皿には真理の女神マアトの羽根が載せられます。天秤を操るのはアヌビス、結果を記録するのはトト。心臓が羽根より重ければ、そばで待つ怪物アメミットに食べられ、その人は二度目の死を迎えます。釣り合えば、オシリスの治める楽園へ進めます。詳しくはアヌビスとはで解説しています。
作品の古代エジプト編では、石版から呼び出される魔物が「カー」と呼ばれます。カーは本物の古代エジプトの言葉で、人が生まれるときにともに生まれ、死後も生き続ける生命力、魂の一部を指しました。墓に食べ物や飲み物が供えられたのは、このカーを養うためです。エジプト人は人の魂をカーのほか、人の頭を持つ鳥の姿で描かれる「バー」などにも分けて考えていました。
※ネタバレ注意: この節は、原作の最終章の内容に触れます。
物語の終盤、もう一人の遊戯であるファラオは、歴史から消された自分の名前を取り戻さなければなりません。名前を知ることが、最後の戦いの鍵になります。
これは古代エジプトの考え方そのものです。エジプトでは名前は魂の一部で、名前が残るかぎり人は死後も存在し続けると信じられていました。だからこそ、憎まれた王の名前は記念碑から削り取られました。神々も同じで、太陽神ラーは誰にも知られていない秘密の名前を持ち、その名前こそが力の源でした。イシスがその名前を聞き出すまでの物語はラーの秘密の名前で解説しています。
聴いて学べる神話アプリMythologyNowでは、オシリスが殺されてよみがえるまでをオシリス 死者の王で、夜ごとの太陽の戦いをラーとアポピス 永遠の戦いで、1話5分の日本語の朗読で聴けます。第1章は、このサイトで最後まで再生できます。エジプトの神々をまとめて知りたい人はエジプト神話の神々一覧からどうぞ。
エジプト神話です。オシリスの天空竜は冥界の王オシリス、ラーの翼神竜は太陽神ラーから名前を取っています。オベリスクの巨神兵は神ではなく、太陽神にささげられた石柱オベリスクが元ネタです。カードの竜や巨人の姿は作品のオリジナルです。
いいえ。神話のオシリスは、ミイラの姿で王笏(牧杖)と殻竿を持つ冥界の王です。弟のセトに殺され、妻のイシスによってよみがえりました。
ウジャト眼と呼ばれる、ホルスの目の印です。神話でホルスがセトに奪われた目が癒やされて元に戻ったことから、「完全に戻る」ことと守りの力を表すお守りになりました。
古代エジプトの「死者の審判」と考えられます。死者の心臓を真理の女神マアトの羽根と天秤で量り、罪の重さを確かめる儀式で、『死者の書』に描かれています。